学生を惹きつける企業の魅力と条件とは?<前編>

近年、就職活動は売り手市場が続いており、企業が学生を選考すると同時に、学生も企業を選択する機会が増えている。SNSの発達、情報共有の高速化に伴い、企業が求める優秀な学生が魅力的だと感じるのはどのような企業なのか。私自身も2019年卒の学生として就職活動を経験し、周りの学生の情報収集への意識の高さなど身をもって体感した。筆者は現在、インターンとしてAI CROSS株式会社で働いているが、就活を終えた学生としての観点、またインターンで働いている観点の2つの見解を織り交ぜながら、現在の学生を惹きつける企業の条件を考察していく。

20年卒の1位は「味の素」!その理由とは?

そもそも今現在、就職活動をしている(もしくは終了した)学生はどのような企業を目指し、就活をするのだろうか。一昔前であれば日本では電機・機械系の製造業が学生が入社したい企業ランキングの上位を占めていた。直近の就活を経験した2019, 2020年卒の学生が行きたい企業の上位には下のような企業がランクインしている。

2019年卒、2020年卒の学生共に食品・消費財系のメーカーが近年の傾向通り人気を博しているのが伺える。特に興味深いのは2020年卒の学生が企業を選ぶ基準である。楽天によれば、食品・消費財系のメーカーが上位を占めた要因の一つとして、「福利厚生がしっかりしている」などの職場環境に関する基準を挙げる学生が多かったと言及している。つまりこれは安定志向の学生の数が増え、そのような学生が上記の様な大手企業を支持することでランキングの上位を占めたということだ。

これは実際、同じ現象が就活生だった自分の周りでも起きていた。特定の業界を目指すのではなく、福利厚生が安定している日系大手の企業をとりあえず受けてみるという姿勢を持っていた学生の声は確かによく耳にした。「内定が取れるか」ではなく「どの内定を選ぶか」を考えていた学生の姿勢がこのデータにも表れたのかもしれない。

垣間見える学生の「安定志向」

「安定志向」の学生が増えた事を裏付けるもう一つのデータがある。下のグラフはマイナビが2020年卒の大学生を対象に行った就職意識調査における「企業選択の際のポイント」の01~20年卒の推移である。

これを見ると2017年卒あたりから「安定している会社」というポイントが急上昇しているのが分かるだろう。そして遂に2020年卒の学生においては企業選択の際の最重要ポイントとなった。このグラフの他のデータにも注目してみると「給料の良い会社」、「休日、休暇の多い会社」の値もここ3年で上昇傾向である。

実際に「安定」、「給料」、「休日」とワークライフバランスを連想させるデータの値が上昇しているのだから企業も自社の職場環境をアピールする際、「働きやすさ」に言及するのは想像に難くない。このあたりは次の記事「学生を惹きつける企業の条件とは?<後編>」にて人気企業の「働き方改革」の取り組みを紹介するのでぜひ確認していただきたい。

「デート」と「残業」、あなたならどっち?

これだけ顕著に数字として「安定志向」の学生が増えている現象はどのような理由に起因するのだろうか。最近の学生は労働環境に対して、非常に敏感だ。欲しい情報にスマホやPCを駆使してすぐにたどり着ける。日本生産性本部が調査した2018年新卒入社の新入社員意識調査を見てみると、プライベートも充実させたいと答えた人数が急激に増えていることがわかる。

この問いに対しては「両立」と回答した人数は78.0%と最も多かったが、残りの回答に注目した場合、生活中心の回答をした人数が増えている事から、「平日も自分の時間が持て、自分の時間を持ちたい」と多くの新入社員が考えていることがわかる。つまり、仕事だけでなく私生活も充実させたいという理由で福利厚生が充実していて職場環境の整っている安定した企業を学生は求めているのだ。興味深いのはこのデータだけでなく、その他のデータで示されている「仕事へのコミットメントの低下」だ。

                           今年度   (差:昨年/ 5年前)

ーあまり収入が良くなくてもやりがいのある仕事がしたい     …50.5%  (-2.3 / -16.5)

ー面白い仕事であれば、収入が少なくても構わない        …44.3%  (-2.2 / -15.7)

ー仕事を生きがいとしたい                   …68.5%  (-5.1 / -11.6)

ーリーダーになって苦労するより、人に従っている方が気楽でいい …56.2%  (+0.8 / +9.9)

ー仕事はお金を稼ぐための手段であって面白いものではない    …41.0%  (+1.9 / +9.5)

※出典:平成30年度新入社員「働くこと」の意識調査(公益財団法人 日本生産性本部)

安定した会社が良いという傾向は「仕事へのコミットメントの低下」という現在の新入社員の姿勢にも多分に影響された結果であると考える。プライベートを優先し、仕事へのコミットメントへの低下が見られる学生を惹きつけなければいけない現在の就活市場は企業の人事にとっては頭を悩まされる状況だと考えられる。

デートがある日に残業を命じられた場合、もしあなたならどちらを優先するか、企業の同僚と話し合ってみるのも面白いかもしれない。

まとめ

今回紹介した学生の傾向は決して全ての学生に当てはまるわけではない。例えば、人気が上昇したのは食品・消費財メーカーだけではなく、コンサル・シンクタンクにも当てはまる。これは「やりたい事」が特に決まっていない学生が将来のためにスキルを身につけ、自分の選択肢の幅を増やそうとしていると考えられる。「安定志向」の学生にしても「スキル志向」の学生にしても共通するのは、自分の人生を見つめた上で「会社への貢献」の意識が薄れている事かも知れない。